分厚い扉にもたれかかって、髪をかきあげる。


あー、もう。


心臓がうるさい。


俺、ちゃんと自然に話せてたかな。



「ねぇ、江藤駿先輩とどういう関係なの!?」



屋上から、琉美ちゃんの友達の大音量な声が聞こえてきた。


なんだよその、気になるけど聞きたくないけどやっぱり聞きたい、グレーゾーンにあるような質問は!!


悩みに悩んだ末、琉美ちゃんの答えをちゃっかり盗み聞きすることにした。



「すごく、すごく、大事な人だよ」


「それはつまり、彼氏ということでよろしいかな!?」


「うーん、彼氏よりももっと大事、かな」



ズキュンときました、ズキュンと。


きっと、もろくて切なそうなのに凛とした、花よりも可憐な笑顔で、そう言ってくれたんだろうな。



「……俺も、君のことが大事だよ」



ポツリ、と囁いた声は誰にも拾われないまま、消えてしまった。


俺は、静かに歩き出す。


階段を下り、徐々に離れていく琉美ちゃんとの距離をもどかしく思いながら、なんとなく過去を思い出していた。