桜が散り、春が終わりを告げようとしている、五月下旬。



一時間目の数学が終わり、日直である私は、黒板を消していた。


数学の先生は黒板の上の方にもよく板書して、しかも筆圧がすごく強い。


うまく消せないし、上の方には届かないし。


くっそー!!


ピョンピョン跳ねながら、上の方の文字をかき消していくが、完璧には消せない。


困ったなぁ……。


誰か、背の高い人に助けてもらおうかな。



一応できるところまで自分でやろう、と思って爪先立ちをして頑張ってみる。


すると、誰かが私の代わりに黒板の上の方を消してくれた。



「これでいいか?」



私を助けてくれたのは、椎本くんだった。



「あ、ありがとう」


「……別に」



私がお礼を言うと、椎本くんはプイと顔を背けて、自分の席に戻ってしまった。