昔、まだお母さんが生きていた頃。
幼い私に、お母さんは言っていた。
『この国は、本当にいい国よ』
『私、早く外に行って、いろんなもの見たい!』
『……ごめんね、オーロラ。それはできないの。でもね、』
もしかしたら、お母さんは、知っていたのかもしれない。
私が、いつか外の世界に踏み込むことを。いつか、旅に出ることを。
『オーロラが大人になって、外に行くようなことがあったら、純粋な心でこの国を見てね』
『純粋な心?』
『そう。汚れのないその心で、この国に、歌を届けて』
お母さんは私の頭を愛おしそうに撫でながら、“君に贈る幸せのかたち”を歌った。
歌の途中で涙を流したお母さんが、どんな気持ちで歌を歌っていたのか、その時の私にはわからなかった。
だけど、今なら、なんとなくわかる。
お母さんはきっと
“君に贈る幸せのかたち”の、「君」を想って
大切な人を想って
歌っていたんだ。



