オーロラの歌





上の空だったHRが終わって、数分後に授業が始められた。


火曜日の一時間目は、サエちゃん担当の世界史だ。



「前回の続きから始めます。教科書の十ページを開いてください」



生徒は、相変わらず丁寧なサエちゃんの授業を熱心に受けている。


ただ、一人を除いて。


その一人というのは、もちろん私のこと。



「中学でも習ったほど有名なこの人は……」



サエちゃんが発する美声が、耳をくすぐった。


サエちゃんの授業は大好きだけど、今日は真面目に聞けない。


シャーペンをグッと握って、黒板に書かれたことをノートに写す。


頭には、イービルの悪魔な笑みが浮かんでいた。



頬杖をつきながら、オーロラに会った夢をぼんやりと思い描いた。


オーロラが赤の他人だったら、こんなに悩んでいなかったと思う。


何言ってんだ、とか。


こんなのただの夢だ、とか。


そんな風に、あっさりとした解釈をしていただろう。


既視感や現実感を感じても、深くは考えずに忘れようとしただろう。


そうできていたら、どれだけよかったか。



「ここ、テストに出ますよ」



サエちゃんがチョークで黒板を二度叩く音を、私は受け付けなかった。