雛森唯夏という名前をどこかで聞いたと思ったら、『バレー部に入った期待のエース』と佳那が言っていた子だと思い出した。
運動が苦手な私は、運動が得意な人を見ると、羨ましく思ってしまう。
「唯夏ちゃん、それ、どうしたの?」
利一くんが、唯夏ちゃんの右頬に貼ってある絆創膏を指差して聞いた。
「あぁ、これ?バレー部に入部してすぐに、先輩に調子に乗らないようにって引っ掻かれたの。いわゆる、いじめってやつかな」
「え!?大丈夫なの、唯夏ちゃん」
「利一、そんなに心配しないでよ。あんたと違って、あたし強いし。こんなのどうってことない」
唯夏ちゃんは本当に先輩からのいじめを気にしてなさそうに、ペリッと絆創膏を剥いで、強気に笑った。
利一くんは、そんな唯夏ちゃんに安心して肩を下ろす。
「そろそろ部活行かなくっちゃ。じゃあまたね、利一」
「部活頑張ってね」
「はい、ありがとうございます」
私の言葉に礼儀正しく頭を下げた唯夏ちゃんは、忙しさそうにこの場をあとにした。
利一くんと唯夏ちゃんは、まるで対照的で。
対極にいる同士の幼なじみという関係に、少しの興味を抱いた。
「利一くんって、唯夏ちゃんのこと好きなの?ていうか、恋人だったりする?」
私が試しにそう問いかければ、利一くんは戸惑った様子で全否定した。
「恋人でも好きな人でもないですよ。ただの幼なじみです」
「へぇ……」
「ほ、本当ですよ!?」
利一くんが信じてなさそうな私に念を押してきたので、私は「わかったわかった」とお兄ちゃんをなだめるように適当に返事をした。



