「小倉先輩!」
帰ろうとした私に声をかけてきたのは、水曜日に一緒に当番をする、一年生の久賀 利一【クガ リイチ】くん。
ロシア人と日本人のハーフである利一くんの、ベージュ色の柔らかそうな髪は、いつ見ても撫でたくなってしまう。
「私のことは琉美でいいよ」
「え、あ、る、琉美せ、んぱい……」
利一くんが顔を真っ赤にしながら、私のことを“琉美先輩”とたどたどしく呼んでくれた。
その姿が、可愛くて可愛くて。
抱きしめたい衝動を必死にこらえる。
「それで、どうしたの?」
私とあまり変わらない身長の利一くんに、改めて尋ねる。
何か用があって、私を呼び止めたんだよね?
「これ、落としましたよ」
利一くんはタレ目な瞳で私を見つめながら、ピンク色のハンカチを渡した。
私はポケットの中を確認して、ハンカチを落としたことに今更気づく。
「ありがとう、利一くん」
「いえ」
利一くんって気弱そうだけど、温和な性格なんだよね。
わざわざハンカチを拾って届けてくれたり、お願いごとをちゃんと聞いてくれたり。
利一くんの控えめな笑顔が、母性本能をくすぐる。
「あの、僕、頼りないとは思いますが、水曜日の当番頑張ります。よろしくお願いします」
「うん、こちらこそよろしくね」
真剣な顔つきで言った利一くんに、私は笑みを浮かべた。



