『転生魔法の名前はシクザール・スプライト。その呪文を聞いたら、危険だと察知してください』



ウメおばあちゃんの残像が、振動している脳に流れた。


女王様は何をする気なの?


その時、女王様と目が合った。


女王様の、人とは思えない濁りきった眼差しに、背筋が震える。


まさか……!


女王様の高く突き上げられた手が、何かを掴むように、グッと握り締められる。




「――シクザール・スプライト」




女王様はついに、この世にある魔法の中で最も唱えてはならない呪文を、唱えてしまった。


どうして、このタイミングなの?


女王様から、もう少しで闇を引き剥がせるのに。


恐怖と戸惑いと痛みが、私の中で渦を巻く。



全てがやり直されてしまう。


止めなくちゃ。


なんで、歌声が出ないの。


早く、早く、歌わせてよ!


もどかしさが、募っていく。



勢いよく振り下ろされた女王様の拳が、床と軽くぶつかった。


すると、ピカッと窓の外が光った。


悪い予感が確信になって、私の心臓が縮まった。



「また会いましょう、オーロラ」



女王様は静寂を断ち切り、私に向けて妖艶に囁いた。