【シエルside】




オーロラ、泣かないでくれ。


俺は、この程度じゃ死なん。


なにせ、俺は精霊なのだからな。



そういえば、オーロラには精霊の本質というものを教えたことがなかったな。


それが裏目に出てしまったか。



オーロラの目の縁に溢れる涙をすくってやりたくても、手はオーロラをすり抜けて。


声をかけても、オーロラには伝わらなくて。


ナイフの激痛より、歯がゆさが押し寄せる心の方が何倍も苦しかった。



こんなにも近くにいるのに、届かない。


さよならじゃないって、教えてやりたい。


また会えると、笑顔で言いたい。



俺は、どんな時もオーロラを見ていたせいか、気づいたんだ。


オーロラが、日に日に弱っていっていることを。


だからこそ、『やめろ、歌うな』と言ったんだ。


俺のために歌って、歌う力が減少したら救えるものも救えなくなる。