ピクリとも動けずにいる私を見て、女王様は企みを思いつく。


そんな女王様に気づいて、ラジとグリンが私を守ろうとした。



「ゼロ、雑魚二人は頼んだわよ」


「はい」



女王様に指示されたゼロさんが、ラジとグリンの行動を阻止しようと、私の腕から放したムチで、二人の足を払った。


転んでしまった二人は、私の名前を叫ぶ。


けれど、やはり二人の声は私には聞こえていなくて。



何をしているの、私は。


立ち上がって、歌わなきゃでしょ?


そうしないと、誰も何も、救えないまま死んでしまう。


こんな私をシエルが見たら、怒っていただろう。


ほら、正気に戻ってよ自分。


……ちゃんと頭ではわかっているのに、力が入らない。



「ウィケッド・ナイトメア」



不意に、女王様が唱えた呪文が、私が張っていた透明な防音のバリケードを突っ切って、耳の奥を通った。


真っ黒い悪のエネルギーの塊が、私に覆いかぶさった。


なぜか重くなった瞼は、私の意思関係なく、静かに下がっていく。



「ごめんね――」



瞼が完全に閉じきる寸前に吐き出した言葉は、誰に対してのものなのか、自分でもわからなかった。