シエルの手が、消えていく。


どんなに強く握り締めていても、星みたいな輝きがふわりふわりと散っていく。



そして、シエルはいなくなってしまった。



するり、と抜けた手のひらには、何もなくて。


流れた涙が、シエルのいた場所に虚しくこぼれる。


受け入れがたい現実から渡されたのは、生への辛さだった。



「チッ、精霊じゃ意味ないじゃない」



女王様の暴言も。



「オーロラ、シエルが消えたのは悲しいけど、今は……」


「シエルの分まで闘おうよ、オーロラ」



ラジとグリンのエールも。


雨音も。


涙が滴る音も。


心臓の音も。



一切、遮断された。



聞こえるのは、ただひとつ。



『オーロラ』



記憶の残骸の、私を呼ぶシエルの声だけ。