最小限にまとめた荷物を、カバンに詰めて。


今まで生活してきた家を出て。


大切な思い出を胸にしまって。



私は今日、旅に出る。




「オーロラ?」



家からたった十歩だけ離れたところで、足を止めて振り返って、ずっと住んできた家を名残惜しむように眺めた。


そんな私に、ラジが声をかけた。



「行くよ~?」



私を急かすように言うグリンに、私は「うん!」と返事をする。



これは、終わりではなく始まり。


そう、わかっているけど。


やっぱり、ちょっと寂しいな。



「行ってきます」



私は、誰に言うわけでもなく、ポツリと呟いた。