生きていくために、僕に残された道はひとつしかなかった。


それは、



『クソガキ、待ちやがれ!』


『チッ、またあいつか……』



他人から食べ物を盗むことだった。


狼男な僕の逃げ足は速く、誰にも捕まりはしなかった。


いつだって、誰からだって、無理をしてでも盗んだ。


僕の悪い噂や、ボロクソ言われていた評判や、穢らわしい身なりなんか、一切気にしていなかった。



何もかもが


“仕方がない”のだから。



この町も、僕の歪な世界も、汚く見えた。


身勝手に切り離された、色も音もない、地獄と背中合わせな現実。


幸せを知らない僕は、悔やむことすらバカバカしく思っていた。





十歳になった頃には、フロンティア・シティだけでなく、隣街のアストラル・グラウンドまで、行動範囲を広げていた。


故郷よりも格段に物数が多いアストラル・グラウンドを拠点にし、迷惑なんてお構いなしに盗人を続けた。



そんなある日。


アストラル・グラウンドで便利屋をしていた奴らに、話しかけられた。



『最近噂になってる狼って、お前のことだろ?』


『人違いでーす』