「――ゼロ、起きなさい!」



長い夢から覚め、瞼を持ち上げると、目の前には険しい顔をしたお母様がいた。


お母様、怒ってる?


まあ、当然か。


僕が姉さん達を逃がしたんだから。



「オーロラは?」


「逃げました」


「逃げた?……ふっ、やってくれるじゃない、小娘が」



“僕”の感情が反映されない、まがいものの自分。


お母様はそんな僕を叱りはせず、怒りがマックスを超えたせいか、笑みをこぼした。



「次は絶対に逃がさないわ。必ず、仕留めてみせる」



恐怖で震えることすら、できない。


やっぱり、お父様がかけてくれた魔法は、もう失くなってしまったんだ。



「デス・ディメント」



お母様が念のためを思って、僕にいつもの強力な催眠魔法を唱えた。


洗脳が、奥底にまでのめり込んでいく。



僕は、本物のお母様の玩具へと、変わってしまった。


姉さんと笑い合うことも、お喋りすることもできないのか。


最悪で、とても寂しい。



だけど、いいんだ。



僕は自分の狂った運命を、受け入れよう。


この先に待っている終止符を、待ちわびながら。