エストレア・シティで、お母様の命令だとしても、久し振りに姉さんに会えて嬉しかった。
タイミングよく洗脳が解けたから、わざわざ湖にまで呼び出して、姉さんと話した。
姉さんのことを考えると、無効化の魔法が発動するのは、おそらく偶然でもなんでもないのだろう。
企みも罠もない、二人きりの時間を過ごしたかった。
姉さんのそばで、姉さんの声を聞きたかった。
『――ゼロさん』
初めて姉さんに、ベンチに座っていた僕の名前を呼ばれただけなのに。
泣きそうになるくらいの幸せが表情に出て、こんなみっともない顔を姉さんに見せられなくて。
振り返る代わりに、僕の隣に座るように示した。
それが、精一杯だった。
『どうして私を、ここに呼んだんですか?』
僕の隣に座った姉さんは、不思議そうに聞いてきた。
ただ、会いたくて仕方なかったんだ。
なんて、言えるはずもなく。
『オーロラさんこそ、僕に用があったんじゃないんですか?』
他人行儀に、はぐらかしてしまった。
本当は「姉さん」と呼びたかったな。
姉さんは、僕が義弟だと知らないから、呼べないけれど。



