翌日の午前十時くらいまで、宿で念入りに旅路を話し合ったり、疲労を取るように休んだり、宿の人が作ってくれた美味しいご飯を食べたりしていた。
そして、姿を消したシエルに宿の周囲が安全かどうか見てもらってから、部屋を出た。
「もう行っちゃうの?」
「泊めてくださってありがとうございました」
受付の前を通ると、昨日の黒人が話しかけてきた。
黒人は名残惜しそうに、改めてお礼を言った私の手をギュッと握った。
「あなた、とても悪そうには見えないわ」
突然そんなことを囁かれて、目を見開く。
「昨日言ったでしょ?この宿にはワケありな人がやってくる、って。だからかしら。本当に悪いかどうか、見ただけでわかるようになったのは」
目利き、のようなものだろうか。
手を握る力が、強められる。
まるで、パワーを注ぎ込んでいるみたいだ。
「大変かもしれないけど、頑張ってね」
やっぱり、この人には私がオーロラだってバレている。
でも、それをわかった上で、私達を泊めてくれたんだ。
しかも、エールまでくれるなんて、優しすぎるよ。
お返しとして何かしたいけど、私には何もできない。
だから、最高の笑顔を送ろう。
「はい……!」
私は元気よく返事をして、一礼してから、仲間と共に宿をあとにした。



