宿に入ってすぐのところにある受付には、ガラの悪そうな黒人が一人立っていた。
その黒人と目が合って、ビクッとする。
「すっみませーん!一泊したいんですけど、部屋空いてますか~?」
軽いノリで尋ねたグリンを、黒人が睨みつけるように見る。
ぐ、グリン、すごいなぁ。
あんなに怖そうな人を相手に、余裕そうに、いつも通り接することができるなんて。
黒人は険しい顔つきのまま、今日の宿泊客と部屋数を調べ始めた。
しばらくして、黒人の表情がふにゃりと柔らかくなる。
「えぇ、空いてるわよ」
「……!?」
黒人の口調に驚いたのは、もちろん私だけではない。
きっと、ラジもグリンもシエルも、目を丸くしただろう。
えっ、ま、まさか、この人……そっちの人!?
「一人一部屋ずつは無理だけど、二部屋なら大丈夫よ」
最初の印象からは考えられないほど素敵な笑顔を向けられて、私達は言葉を失くして呆然とする。
そんな私達に、黒人は私達の気持ちを理解したように「あぁ」と呟いた。
「もしかして、怖がらせちゃったかしら。ごめんなさいね」
「い、いい、いえ」
宿だけじゃなく、受付の人までも偏見を持ってしまった。
謝らなくちゃいけないのは、私の方だ。



