『お前、誰だ?』



窓枠に頬杖をついて空を眺める少女は、突如目の前に現れた俺に驚いた。



『お兄さんこそ、誰……?』


『俺は、森の番人だ』



俺は、精霊では千歳だが、人間でいうと二十歳くらいだ。


“お兄さん”という呼ばれ方には慣れておらず、むずがゆい気持ちになる。



『なぜここに住んでいる?』


『ここは、私の生まれた場所だから』



どういうことだ?


この森が聖なる場になって以来、人が来ることも住むこともなくなったはずだが。


俺がいなかった間に、何が起きたんだ?



『ここは……』



泣くのをこらえるように俯いた少女。




『お母さんと過ごした場所だから』