強く強く、拳を握り締める。
手のひらに爪が食い込んで、血が流れた。
あたしの髪と同じ、真っ赤な色に染まる鮮血が。
午後九時まで、残り一秒。
喉元を抑えたアンジェラスの姿を、揺れる瞳で捉えた。
ねぇ、神様。
……なんでよ。
なんで、現実はあたしの思い通りにならないの?
なんで、あたしの望む未来が訪れてはくれないの?
時計が午後九時を示す。
それと同時に、アンジェラスは何かに誘われたように、何かに駆り立てられたように、喉の奥から歌声を発した。
『これは……っ』
『紛れもなく、いやしの歌だわ』
お父様とお母様の話し声が、うっすらと聞こえてきた。



