それは、五歳の誕生日。


悪夢の、始まり。




『イービル姉様』



朝食のため、自室から広間へ移動していると、後ろからあたしを呼ぶ声が聞こえて、足を止めた。


振り返ると、あたしに追いつこうと一生懸命にちょこちょこ駆け寄ってくる妹のアンジェラスの姿が。



『おはよう、アンジェラス。いい夢は見れた?』


『おはよう!美味しい夢を見たよ』


『美味しい夢?ふふっ、相変わらず可愛いわね』



まだ、たった二歳の妹。


小さな小さな、あたしの妹。



『イービル姉様は?』


『あたしもいい夢を見たわ。素敵な方と結婚する夢を』



アンジェラスは、姉であるあたしを心から慕ってくれていた。


そのことが、とても嬉しかった。