肌寒い風が、吹く。 草花も、湖も、なめらかに揺らめく。 ゼロさんの、右の瞳も。 「オーロラさん」 名前のない感情が、心臓の奥底に押し寄せる。 また、懐かしさを感じた。 「また、会いましょう」 また会いたい、と言っているようだった。 私の乾いた唇から、ゼロさんの指が離れていく。 私が何か言う前に、ゼロさんはボソボソと呪文を唱える。 ざわり、と強い風が私の前を通り過ぎて。 風になびく髪を抑えながら、キュッと目を瞑る。 再び目を開けると、そこにはもう、ゼロさんはいなかった。