「葉月ー?タオルこれ使ってね」

「はーい」

脱衣場で響くお母さんの声に返事をした。私はお気に入りの入浴剤を入れたお風呂に浸かりながら一息ついた。


唯一の癒しの時間。

特別な時に使おうと決めてたけど、たまにはご褒美がないとやってられない。

好きなアーティストの歌を口ずさんで体が暖まった頃、私はようやくお風呂から出た。

あれ、お母さん洗剤変えたのかな?タオルの匂いがいつもと違うけど好きな匂いだなぁ、と思いながら髪を拭いているとガラッ!と勢いよく脱衣場の扉が開いた。


「――ち。まだ入ってたのかよ」

結月は私を見て舌打ちをする。


「ちょ、ちょっと!」

慌てて体を隠そうとしたけどタオルが今日に限って小さい。

……ってかなんなの?普通に丸見えだったのに舌打ちとか、ごめんが先じゃない?

文句を言おうと思ったのに結月はため息をついて扉をまた勢いよく閉めていった。


もう、まじでイヤだ。

せっかくお風呂で癒されたのに台無しだ。