「お、矢野じゃん。なに食ってんの?」

そこへ3年の瀬川先輩が通りかかった。


瀬川先輩はバスケ部のエースで、以前女子バスケットの助っ人として試合に参加した時から交流がある。

後輩の面倒見がよくて、顔を合わせるとこうして気さくに声をかけてくれる。


「お弁当ですよ。先輩はまた学食ですか?」

「おう。学食が食えるのもあと1年もないしさ。弁当矢野が作ってんの?」

「まさか~。普通にお母さんですよ」

瀬川先輩は結月と違って暴言吐かないし、目付きも悪くないし、比べるとなんてうちの弟は荒(すさ)んでいるんだろうと染々思う。


「そういえば矢野っていつもラインしても返事はスタンプだよな」

先輩はパックのコーヒー牛乳をストローですすりながら言った。


「え、スタンプ可愛くないですか?」

「あのいつも送ってくるブサネコ?俺には可愛さはわかんねーや」

あのやる気のないブサイク具合がいいと思うんだけどな。


「今度暇なとき飯いこうな。ラーメンぐらい奢ってやる」

「まじですか!私駅前にあるラーメンがいいです!あそこの特盛めちゃくちゃ美味しいですよね!」

「はは、特盛かよ」


そのあと先輩は「またラインするなー」と友達の元へと戻っていった。

ああ、ラーメンの話したらラーメン食べたくなっちゃった。学校帰りに行っちゃおうかなぁ……。


「葉月ってけっこう鈍いよね」

「ん?なにが?」

なぜか隣で志穂が呆れた顔をしている。


「瀬川先輩、葉月のこと好きなのに」

「!」


なな、なに言ってんの?

急にそんなこと言うから飲み物を吹き出すところだったじゃん。