「いつから?」

「そんなのいちいち覚えてない」

「つまり昔からってこと?」

「まあ」

「あのさ、これだけは、はっきりさせたいんだけど……」

「モゴモゴ喋んなよ。うぜーから」

「志穂、彼氏いるよ?」


そう。さっきも話してたし、結月も知ってるけど志穂には彼氏がいるんだよ。

しかも毎日電話しちゃうぐらいラブラブな彼氏が!


結月にどれくらいの恋愛経験があるか分からないけど、相手がいるのに好きになるなんて無謀すぎる。

それなのに結月は「だから?」と平然な顔をしちゃってるし。


「え、それはつまり……奪うとかそういうこと?」

「は?お前はドラマの見すぎじゃね?つーか勘違いしてるみたいだけど、俺本人に言うつもりもないし、どうにかなりたいとかも思ってないから」

ちょっと意味がわからない。


それは長年片思いをしてるにも関わらず、べつに付き合いたいとかは思ってないってこと?

ん?ん?頭が軽くパニック。


「言ったって困らせるだけだろ」

結月はそう言って、またテレビを見始めた。


結月ってこういうところがあるんだよね。

どうでもいいこととか文句なら遠慮なく言うくせに、肝心なことは言えなくて。

モテるくせに髪の毛とか気にしないし、スウェット1枚でどこにでも出掛けちゃうし。自分のことは本当に無頓着で。


志穂が私の部屋で寝てるってだけで自分の部屋に上がれないほど好きなくせに。

夜中にリビングに来ることなんてほとんどないくせに、大あくびをしながらサッカーなんか見ちゃってさ。

だけど、結月を応援することはできない。


志穂が彼氏といつまでも仲良くいられるならそれが一番いいし、別れることを結月も望んでるわけじゃないと思うから。