生徒達が次々と帰っていく放課後。この人気のない校舎裏に呼び出された回数は20回を越えてから数えるのをやめた。


「矢野先輩!これ受け取って下さい!」

頬を赤らめてラブレターを差し出す後輩。

まるで子鹿のようにプルプルと震えているその子を前に〝私〟は毎回同じことを繰り返す。


「あの、本人に渡してくれない?」

私の名前は矢野葉月(やの はずき)。髪はショートカットで女子の平均よりは背が大きいから男に間違われたことは多々あるけど正真正銘の女で、このラブレターはもちろん私宛ではない。


「だって結月くん受け取ってくれなくて……」

うるうると涙を溜めて言われるとさすがに突き放すこともできなくて、私はいつも面倒ごとを引き受けてしまう。


「分かったよ。本人に渡しておくから」
「本当ですか!?お姉さん」

「………」

そう、私を悩ませている原因は弟の結月(ゆづき)。

何故か小学校から続いてるあいつのモテ期のせいで私は毎日毎日こんな呼び出しをされている。