三月ウサギは恋をする!?




 その中で、投げ出されたボールを近衛はフルスイングした。音も感じることもできないぐらいの、風を切るボール。

軽々とネットを飛び越えたボールは、応援席へ勢いよく落ちていった。数秒だったはずだ。たった数秒の静寂の後、大きな歓声と共にタオルがひらひら舞う。

興奮し過ぎて音が合わない音楽部の応援曲が流れてくる。

やっぱり響也はヒーローだった。ベースを踏みながら、仲間が待つホームへ走って行くと、皆に抱きしめられる響也。大物ルーキーは下を向いて帽子を深く被りなおした。球場内が月華高校へ賞賛の歓声を挙げる。


 勝負は最後まで諦めなかった近衛たちの圧勝だった。ファンファーレが流れ、スピーカーから流れ反響して聞き取りにくい中、近衛の声が聞こえてきた。


『今日の日を、仲間と、先生と、友人と、家族と、毎日のように夢見ていました』

 柔らかい、落ちついた近衛の低い声。