三月ウサギは恋をする!?


「えええ? 御守り?」
 皆がざわめくのを、利香がぽかんとしていると、近衛が貰ったリボンを強く握り締めながら頷く。

「代々、野球部の部長は恋人のリボンを御守りのポケットに入れて試合に臨むらしいらしい。恋人など現をぬかすことなど出来ないか、俺は兎輝ならば喜んで頼める」
「ええっと、あ、恋人が居ないから縁起が良さそうな私ってことですか?」

 一瞬びっくりしたが、それならば周りも利香も納得だろう。

「お前がそう思うならばそれでいい。俺は甲子園で優勝するまで自分の気持ちを伝える気はないから」
「ほ、ほう?」
「だが、お前は学んだはずだ。男女の中はもっと複雑で――言葉では表せないことを。大事なHR中、お邪魔した。失礼する」

 近衛は綾小路に一礼したあと、座っている生徒に数秒頭を下げて、三年校舎へ戻って行く。いつも通りの近衛の後姿だが、利香の顔は真っ赤だった。

「え? えええ? えええええええ?」
「利香! どういうことよ! 利香もガチムチマッチョが好きだったの!? 酷いわ! 羨ましすぎて私、泣きそうよ!」
「いや、縁担ぎだから! わ、私はそんな、ええええ?」

 パニックになった利香は何故かカバンからメロンパンを取り出し齧りついた。
 その日、利香は英語の時間に体操服に着替え、科学室へ行けば皆は体育館へバトミントン、廊下を歩けば壁にぶつかり、美音以上のドジを繰り広げみなもを楽しませた。