もしも先輩の言う相手が識嶋さんだとしたら、相手は確かに女です。

ただし、恋愛関係は一切なしの居候女ですけど。

そんなこととは知る由もない相馬先輩はコーヒーを飲みながら「今度の女は何日持つか」等と零した。

……それ、識嶋さんに疲れてすぐ別れてしまうってことですか。

なんとなく予想できてしまって思わず苦笑い。


「いいところが伝わりにくい人ですしね」

「そうだな。距離の詰め方や関わり方さえ知れば悪いやつじゃ──」


そこまで話して、相馬先輩が「ん?」と首を傾げて私を見た。


「誰の話してるんだ?」


問われて私は自分がうっかり口を滑らしたことに気付いた。


「あ、あれ? 誰ですかね。あ、いけない仕事仕事」


変に勘繰られては面倒だと思い、私は上ずった声で誤魔化しながら相馬先輩から逃げ、自分のデスクに向かう。

背後から先輩の視線をガンガンに感じでいたけれど、それには気付かない振りをして──。