──そこには、何もなかった。
ただ、闇が広がっていて足元も真っ暗で、自分の存在だけがあった。
音すらなく、一片の光も見えず。
不安だけが募る空間で、私はそっと手を伸ばす。
上なのか下なのかもわからない方向へと。
伸ばした自分の手はやけに青白く見えて、まるで死人のようだと思った。
途端、頭の中に浮かんだひとつの懸念。
私は生きているのか。
まさか死んでしまったのか。
いつ、どこで、何があって?
その疑問に答えたのは、脳内に響いたのは。
『つかまえた』
低く、ねっとりとした嫌悪感溢れる声だった。
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