何でもありません。
そう言って終わらせることは出来たのだけど、心配する社長の姿を思い出してしまって。
「あの、もう少し柔らかい言い方をした方がいいですよ」
大島さんじゃないけれど、うっかり忠告してしまう。
識嶋さんは大島さんのことだと理解したらしく、打ち合わせの時かと言いながら海外の雑誌に視線を戻した。
「はっきり言うべきだ。また繰り返されても迷惑だろ」
冷静に返されて、私は気付かれないようにと息を吐いた。
そう、なんだけど。
間違ってはいないんだけど。
「でも、受け取る側のことも考えるべきです。広告と同じで、乱暴なものは衝撃を与え記憶には残るけど、心には不快なものとして残ってしまう」
相手の感情を気にしてばかりいる必要はないけど、心を汲むことは必要だ。
大島さんへの指摘も、もっとやり方があったはず。
識嶋さんは私の言葉をちゃんと聞いているのかいないのか。
黙り込んだまま雑誌に視線を落とし続けている。



