これ……あれかな。

プライベートな何かが書いてあって、アプローチを仕掛けているんじゃ?

だとしたら、なんて勇敢なの。

彼女は識嶋さんから浴びせられる叱咤の嵐が怖くないのだろうか。

というか、これ、私の行動正解なんじゃ。

今出ていくと虫よけとして使われる可能性大?

いやでも、むやみやたらと恋人設定を使うような人だろうかと頭を捻った時だ。


「男漁りなら他所でやれ」


果敢に挑んだ彼女が、バッサリと冷徹に切られた。

フォローするわけじゃないけど、秘書の女性は結構容姿はいいと思う。

髪型もメイクも今の流行りに合わせていて、かつ彼女には似合っているからとても魅力的だ。

服装も秘書らしく清楚で女性らしさもある。

世の男性のほとんどは彼女のようなタイプを嫌う人はいないだろうという印象なんだけど……

何分、今回は相手が悪かったとしか言いようがない。

ああ、識嶋さんから冷たい視線を向けられ固まる秘書さん。

苦笑いを浮かべ見守ることしかできない私を、どうか許してください。

胸中で秘書さんに謝罪した私だったけど。

それから数時間後──


「おー、美織ちゃん。今日はもう仕事は終いかな?」


就業のチャイムが鳴ってしばらく後、帰宅の為にエレベーターを待っていた私に社長が声をかけてくれた。

背後に、一刀両断されていた秘書さんを連れて。