なんて考えてる場合じゃなかった。
どんな流れにせよ、助けられたんだから今はお礼が先。
「あの、ありがとうございました」
リクライニングさせたシートに体を預ける識嶋さんに感謝を口にすると、ひじ掛けにひじをついていた彼は窓の外を見つめたまま唇を動かす。
「たまたま見つけたから声をかけただけだ。別に心配したわけじゃない」
そっけない声色。
だけど、言葉には少しの優しさ。
だって私、何も言ってないから。
助けてくれて、とか、何も。
でも、彼は心配したわけじゃないと言った。
それは、私の様子を見たからこその言葉だろう。
そして、先ほど背後を気にしていたのは、もしかすると私を追っていた人物を確認していたのかもしれない。
「……顔とか、見えました?」
「多分男だろう、くらいだ」
「そうですか……」
やっぱり人はいたんだ。
気のせいじゃなかった。
それから識嶋さんもやっぱり助けてくれたんだと確信し、思わず口元が緩む。
心が、温かくなる。



