「もう! 識嶋さん!」
ひどいですよと抗議する私をなだめるように「悪い」と軽く詫びた彼は、再び口を開くと……
「そんなバカなお前を、まあ……可愛いな、と、思ったん、だよ」
今度は照れてしどろもどろになりながら、本音を零してくれた。
途端、熱を持ってしまった私の頬。
彼の一挙一動に振り回されて。
彼と過ごす一分一秒が愛しさで溢れていく。
「識嶋さん、顔赤いですよ」
「うるさい。お前もな」
フンと鼻を鳴らすと逃げるようにエントランスへ向かう彼の背に、私は胸を高鳴らせながら素直な想いを声にする。
「大好きです。識嶋さん」
すると、彼は足を止めて振り向いて。
「……俺もだよ。だから、生涯俺と一緒にいろよ」
交際の言葉を飛び越えてのプロポーズに、私は破顔する。
御曹司である識嶋さんとの結婚は大変なことがたくさんあるだろうけど、それでも、私はきっと彼でなければダメだと思うから。
だから──



