スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-



「恋人設定があるからって、そこまでする意味がわかりません」


それは、突き放すつもりの言葉だった。

でも、彼は一瞬だけ眉を寄せてから。


「お前は警戒心はないし抜けてる女だが、バカじゃない。だから、本当は気付いてるはずだ」


何がですか、とは聞けない。

彼の言う通り、私は気付いているから。

確信はないけれど、こんな会話をしていれば気付ける。

だけど、首を縦にふるわけにはいかない。


「……やめてください。この話はもう終わりにしましょうよ」


識嶋さん、あなただって気付いてたはず。

私が意図して雰囲気を変えたり、話を逸らそうとしているのを。

今までそれに乗ってくれていたことだってあったはずだ。

それなのに。


「俺が酔った時も、パーティーの夜も、抵抗しなかったのはなぜだ」


今日に限ってそれを許してくれないのは、きっと私と本気で向き合おうとしているから。


「高梨、答えてくれ」


なぜって、そんなの識嶋さんだから。

私の気持ちがあなたにあるから。

そう叫びたいのを堪えて、私は唇を引き結ぶと彼の真っ直ぐな瞳から逃れるように視線を外した。