「トイレもちゃんとあるし、洗面台も大きい……」
なんかもう、食べ物さえあればこの部屋からほとんど出ないで生活ができそうだ。
居候だけど、これならあまり顔も合わせないだろうから、気を使う機会は減りそうでありがたい。
さっきまでお断りする気持ちが大きくなってたけど、ちょっと前向きに考えられそうだ。
そう思ったら少しだけ肩の力が抜けて、私は荷物を解く前に広いベッドに身体を投げ出した。
スプリングが心地よく私の体を受け止めてくれて、大の字で瞼を閉じる。
「……名前、聞きそびれちゃったな」
こんな高級マンションに住んでいて、社長と知り合いならそれなりの人なんだろう。
何をしている人なのか。
社長とはどんな関係なのか。
答えは得られることはなく、家の中で再び彼と会うこともなく、居候生活初めての朝を迎えることとなったのだった。