「さ、お前も行くぞ」
識嶋さんのお母様にも声をかけた社長は、私たちにまたなと軽く手を上げる。
私は急ぎ頭を下げて、識嶋さんと共に3人を見送った。
どうにか切り抜けられて、ようやく肩の力を抜いた私は思わず「助かった……」と零してしまう。
すると、識嶋さんは何故か不服そうに私を横目で睨んで。
「俺だけでもお前をフォローできた」
助けられたことを認めたくないのか、そう口にした。
「何で睨むんですか」
「……別に。俺は少し挨拶に行ってくる」
答える気はないらしく、私の返事も待たずに識嶋さんは挨拶回りに出てしまう。
残された私は、緊張のせいでカラカラになっていた喉を潤すべく水分を求めることにした。
ドリンクコーナーにいるはずのスタッフは出払っているのか不在。
白いシーツの上に並ぶ飲み物の種類を尋ねたかったけど、仕方ないのでとりあえず目についた麦茶の注がれたグラスを手に取る。
そして、一気に飲み干して──
「んっ、けほっ!」
むせた。



