──パーティー当日、夜。
「両親と西園寺夫妻には、お前を連れて行くと伝えてある」
ヴィトンのブラックスーツに身を包んだ識嶋さんに言われて、リムジンの中で私は身を固くした。
覚悟はしてきたけれど、緊張の糸はずっとほぐれることなく今に至っていて。
識嶋さんが手配してくれたバックリボンのついた光沢感のあるネイビーのフレアドレスはとても素敵でサイズだって丁度いいはずなのに、心に余裕がないせいか窮屈な感じがして仕方なかった。
向かい側のシートに腰を沈めている識嶋さんの顔には緊張の欠片も見られない。
その鉄のハートを今だけ貸してもらいたいくらいだ。
やがて車は英国風の大きな屋敷の前で停まった。
黒い重厚感のある鉄の門前には黒服の男性が数人立っていて、招待客のチェックをしている。
運転手さんが後部座席の扉を開けると、まずは識嶋さんが降りて。
「大丈夫だ。俺がサポートする。お前はお前らしく、堂々としていろ」
言いながら、眉を曇らせていた私に向かって手を差し出す。
彼の頼りになる言葉に、まだ少し緊張の面持ちで頷きながら彼の手に自分の手を乗せ、6センチヒールのパンプスで一歩踏み出した。



