「ストーカーなんて、じめっとしたことする奴の気が知れんな。しかし引っ越しまで考えるほどひどいのは……ん? 待てよ?」
憤った顔を見せたかと思えば、何か閃いたように思案しながら顎に生える短い髭に触れる社長。
運ばれてきた懐石料理には手をつけず、「これはある意味……」と、ぶつぶつと漏らしたかと思えば。
「美織ちゃん」
「はい」
社長は少しだけこちらに身を乗り出すようにしながら口を開く。
「もし君さえ良ければ、暫く住むところを提供しよう。しかもボディーガードつきだ」
「えぇっ!?」
住む場所だけでなく、ボディーガードまで!?
な、な、なんですかこの展開!
そんな奇跡のような話があっていいの?
あまり好条件過ぎると怖くなるんですけど!
いや、それよりもそんなに良くしてもらえるような関係ではないわけで。
「そんな、とてもありがたいお話ですけど、ご迷惑はかけられませんっ」
「迷惑なもんか。むしろ願ったり叶ったりだ」
「え?」
なぜ、願ったり叶ったり?
首をかしげるも、社長は「とにかく、今はストーカーから逃げるのが先決。私に任せてくれないか?」と、ようやく箸を手にした。
私はそんな社長に続いて箸を手にしながら考える。



