社長からの三度目の食事の誘いはないまま1週間が過ぎ去った。

秋は次第に深まり、オフィスへ続く道沿いに並ぶ街路樹の葉も少しずつ色が変わり始めている。
朝夕は肌寒いせいか、上着も厚手のものを着ている女子が多くなった。
そんな中を歩いて出社してみると、珍しく蛍と聖に出会った。



「おはよう」


私の声に驚いて振り向く二人。
いつもなら車で出社してくる予定の私が徒歩だったせいか、意外に思ったみたい。


「おはよう、真綾」

「珍しい。今日は歩きなの?」


三人で並んで歩くことなんて滅多にない。
私の出社時間は日によってフレックスになることもあるから、二人とこうして歩けるのは数少ない機会。


「車を車検に出したからなの。たまには満員電車に揺られて来るのも珍しくて楽しいよね」


余裕のある言い方をしたけど、2ヶ月ぶりくらいに乗った満員電車には辟易だった。


「そう言いながら髪のセット崩れてきてるよ」


すかさず聖が突っ込んでくる。


「えっ!?ホント!?」


マズい。始業前に整えておかないと。


「大丈夫。少し髪の束が緩んでるだけだから」


サラサラのストレートヘアを括りもせずいる蛍が教えてくれる。


「私、蛍が髪を纏めてこない理由が判ったわ」


満員電車内ではセットが崩れ易いからなんだ。


「えっ!単にズボラなだけだって判っちゃった!?」