「……兄さんには、わからないのよ」


涙を堪えるような声で言い返した。


「何をだ」


「何をって、大ちゃんの寂しさとか、悲しさとかが!」


ぎゅっと両手を握った。


「それを知って欲しいと、大輔がお前に言ったか?」


横顔を睨みつけて、改めて問いただす。


「それは……」


純香が口籠り、目が彷徨うかのように狼狽えた。


「そんなことを頼まれもしねーで勝手に背負い込んでるだけだろ。だったら今すぐ捨てろ。お前が背負い込まなくても、大輔には一緒に背負い込んでくれる女がいるんだよ!」

「だから、その女は……」

「純香、自分が気に入らねーからって、大輔が選んだ女を疎むんじゃねぇ。
ケイちゃんがもしもお前と同じ立ち位置にいたら、あいつのことを考えて身を引くんじゃねーのか?

気持ちってやつは、押し付けるだけじゃダメじゃねぇのか。
押し付けねーで、丸ごと抱え込んでやる方がいい時だってあるんじゃねーのか!?」


少なくとも幼い頃の純香は、そんな感じで大輔に接してたと思う。
だけど、好きだって気持ちが入りだしてからは、自分の感情が抑えきれなくなった。


「お前が納得いかねーのなら直接大輔にアタックしてみろよ。ウダウダ回りくどいことしてねーで、もう一度正面からぶつかれ。

多分見事にフラれるだろうとは思うけど、その方がお前にとってはプラスになるんじゃねぇか?