目の前にいるストレートヘアの女を眺めて思う。


どんなにカラダが繋がったって、心が通わないと崩れてしまう。

大ちゃんの歴代の女達は全員、そんなカンジでダメになった。

私もいろんな形で邪魔をしてきたけど、結局は大ちゃんとの心の交流が無いのが原因。


この人だってきっと同じ。

今だけが良くて先が無いに決まってる。




「私の話はおしまいよ。中に戻れば?」


タバコをポケットから取り出して言う。
悔しそうに唇を噛みしめてた女は、目を伏せて歩き出した。



「私……」


数歩進んだ先で振り返った。
その顔を見返して何を言うのかと思っていたら……



「負けませんから」


堂々とした顔つきでそう言い放った。
自信に溢れてるように見えたのは、私が追憶に浸っていたせいかもしれない。


「私しか知らないことだってあるんです。大輔さんを守れるのは、純香さんだけじゃない」


キッパリと吃りもせずに言い渡された。
呆気にとられる私を残して、さっさと店内に入ってしまった。





「何よ」


ぎゅっとタバコを握りつぶす。


「あの人しか知らないことって何よ」


大ちゃんとの時間が一番長いのは私なのに、その私よりも短い付き合いの女の方が知ってると言うのは何を。

口からでまかせを言うのもいい加減にして。絶対にそんなことあり得ないから。