真綾さんにそう言われるのなら安心だけど、問題は我が子の方にもあり……




「遊びじゃないのよね?」


日曜の夜、帰ってきたところを捕まえて大輔に話を聞いた。
彼は迷惑そうな顏を見せて、「心配するな」と声を出した。


「ケイのことは遊びじゃないから。遊びで付き合うなら二人に会わせたりしない」


「本当ね?」と念を押してしまった。
大輔は呆れるように息を吐き、「ああ」と真っ直ぐ目を見て答えた。


安心しながら和室へと足を運ぶ。

寝る前に拝む習慣のあった私よりも先に、主人が仏壇の前にいた。

何も言わずに遺影を見つめる姿を見かけてしまい、そろりと足音を忍ばせて逃げる。


二人の空間に水を差してはいけない。
今は私が妻でも、あの二人きりの空間には足を運べない。

再婚しようと言われた時、拓磨さんは大輔の父親になることも引き受けると言ってくれた。
私のことだけでなく、大輔の人生をも同じように背負うと言ってくれた。


それ以上の何も求められない。
私のことだけを見つめて愛して欲しいとは、口が裂けても言えない……。




「沙百合」



優しく名前を呼んでくれる夫は、父親という名を持つ男。

それだけで満足をしなければ、バチが当たってしまう。


それ以上の何も望まないでいよう。

側にいてくれる、それだけで有難いと思おう。



「拓磨さん」


歳を重ねても求めてくれることが嬉しい。

ドロドロの感情を押さえ付けてでも、この人の腕に抱かれると落ち着く。