私には二人の息子がいる。

一人は自分が産んだ子供で、もう一人は再婚相手の子供。
二人は7歳違いで、偶然にも名前の一字が同じ。
だから名前だけ見ていると、まるで最初から兄弟だったかの様な印象を受ける。

再婚相手の子供の名前は「祐輔」
私が産んだ子供の名前は「大輔」


運命という名の糸に導かれた私達は、祐輔さんの妻を含めた五人で同じ家に住んでいる。
今時珍しい二世帯家族で同居をしている訳は、主人の亡くなった前妻のことが関係している。



主人の前妻はガンでお亡くなりになった。
まだ38歳という若さでこの世を去り、そのことを受け止めきれないでいる主人の落ち込みは、当時相当に酷いものがあった。


私が主人に出会ったのは、前妻が亡くなってから3ヶ月も経っていない頃だったと思う。

就職の面接に現れた彼は、初対面から顔色の優れない様子だった。
きちんとした身なりはしていたけれど、どこか疲れている様な雰囲気が伺えた。

「秘書の経験は?」と聞かれ、「ありません」と答えると、「では、どうして面接に来たのですか?」と聞き直された。

場違いなことをしてしまったのだろうかとオドオドし、でも、どうしてもある程度の高収入が必要だったので理由を教えた。


「事情がありまして、それなりの収入が見込める企業を選ばせてもらいました」


仕事の内容は二の次だった。