灰澤さんにとって、中学一年の記憶はどういうものなのだろう。 自分の見解では、蓋をしたいものだと思っていた。その蓋を取り去ったのは他でもない俺だけれど。 蓋を取ったからと言って、良いものに変わるわけではないが。 「……矢敷さん、怒ってます?」 正面に座る灰澤さんが、恐る恐る聞いてくる。 「怒ってないです。どうして?」 「正面ロビーで、待ってなかったので」 「それは、単に鹿沼と会いたくないかなと思ったから」 俺が、勝手に。 トマトソースパスタをくるくると巻いていく。