矢敷さんの目が覚めたらしい。ぼんやりと宙を見てから、こちらに視線が向いた。 「……げ」 「それ、人の顔見て言う言葉ですか」 「……終電が」 「ちなみに私は金もありません」 自分の腕時計を見てから、その腕を目元の落とした。また眠るつもりだろうか。 私はテーブルに置いてあるウーロン茶を引き寄せた。 「お茶飲みます?」 「ください」 起き上がって隣に来る。ストローを避けてコップに口をつけて飲み干した。 気だるげにしていても格好良い。 ルックスが良いひとってお得だ。