「あったら良いんですか」

矢敷が笑う。フライパンの火を消した。

返事をしないでいると、慣れたように炊飯器の蓋を開く。
ほかほか、とご飯の香りがした。

「じゃあ持ってくれば良かったな」

「……できればちゃんと連絡してから来てもらいたいです」

「じゃあ連絡して着替え持ってきますね」

ご飯をよそって、その上に野菜が乗せられていく。
灰澤は玉ねぎをスライスして、静かにミルクパンに落とした。

「矢敷さん」

「あ、まずい。目玉焼きの目玉が」

「私の恋人になりませんか?」

驚いた顔で矢敷がこちらを向く。結局菜箸は両方の黄身を潰してしまった。