『リストカット』


それは、言葉どおり、手首を切るという、自虐行為。



わたしがこの言葉を初めて聞いたのは、小学生のとき。


でもわたしは、この言葉を知る前から、リストカットをしていた。


最初は、呆れる理由だが

冒険をしたい一心だった。


部屋にあった、図工用のはさみを手首に軽く手前に引いた。


じんわりと血が滲み、手首に赤い筋を作った。



「……うゎ…」


正直、変に思われるかもしれないが、感動した。


当時まだ10歳だったわたしは

あまりに身近に

否、直に生というものを感じた。


それが新鮮だった。


けれど、後を引く痛みはあまりいいものではなく

わたしが小学校を卒業するまで、リストカットをすることはなかった。