私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



ズキズキと痛む胸を、手で押さえる。
こんなに苦しいなら、恋なんてするんじゃなかった。


「……どうして……」


どうして、一護だったの……。
もっと、他にいるじゃん、男なんて。


何度も何度もそう思って忘れようとしたのに、どうしても一の事ばかり考えてしまう。

忘れられない事が辛かった。


「椿、どうしたの??」

「えっ……?」


突然、心配そうな紗枝の顔が目の前に現れる。
それにハッとして我に返った。


いけない、また考え込んでた……。

「もー、ちゃんと話聞いてた??」

「だ、大丈夫。ごめん、何の話だっけ?」

「今日バイトあるの?って、話!」


むくれる紗枝に、私は「ごめん」と苦笑いで謝る。

私が紗枝を傷つけるなんて、絶対にない。

それは、紗枝が私の大事な親友で、どんな時もこの子の味方でいるって決めてるから。