気持ちが見えなくて、不安になるのはみんな同じ。
そして、惑わせてるのは、きっと私だ。


「一護、大丈夫だよ……」

「どういう意味だ……?」

「一護は、私が天敵だから、気にかかるだけ。紗枝が好きって気持ちは、本物だから」


だって、一護は本当に幸せそうに、紗枝が好きだって打ち明けてくれたんだ。

あの日は、ショックが大きくて、突き放すことしか出来なかったけど、今は分かる。

一護とは、すごく仲が良かったから。
少なくともあの日までは、私が一番一護と仲良かったもの。


「なんで……そんな事、お前に分かるんだよ」

「……私達、仲良しだったでしょ」

「ただの天敵を、ほかの男に取られたくないなんて、思うか?もう、頭の中が、意味分かんねぇんだよ……」


額を押さえる一護に、罪悪感が沸く。
私がいなければ、純粋に紗枝を思えたのに……。

嫌いと好きを履き違えてるんだ、一護は。

大好きな人を、苦しめたいわけじゃない。

なのに、親友の紗枝も、大好きな一護のことも、傷つけてしまうのなら…私は……。


「一護」

「椿………」


不安げに揺れる一護の瞳を真っ直ぐに見つめ返して、ずっと隠してきた笑みを浮かべる。


"ちゃんと、サヨナラしよう"。

心からは無理でも、せめて悟られることの無いように、2人の背中を押そう。