私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



***

放課後、吹奏楽部へ行く前に、紗枝と教室に残る。

机には、何個か鞄が置いてある席もあるが、部活だからか、生徒は私達しかいない。

窓際に立つ紗枝は、夕日を背に、私を振り返る。


「……ねぇ椿」

「うん……」


今だけは、紗枝が私に何を尋ねたいのかが分かる。

紗枝は、きっと……。


「椿、一護くんの事、本当は、どう思ってるの?」

一ー護への気持ちを、聞きたいんだーー。

「…………」

なんて答えよう……。
誤魔化してきたはずなのに、紗枝には分かってしまう。

だけど、今それを認めたら、今までの努力は全部泡になっちゃう。


紗枝の事が好き。
私を助けてくれた、優しくしてくれた、大切な親友。


傷つけたくないと言いながら、傷つけてる。
私が……迷ってるから…?


応援するって言ったのに、一護の事をいつまでも気にかけてるから……。

また嘘を重ねても、私はつきとおさなきゃ。
だって、紗枝と一護は両想いなんだから………。

私が、2人の仲を引き裂こうとしてる、邪魔な存在なんだから……。