「椿……」
「だから……」
私は重ねられた手を名残惜しむようにゆっくりと離す。そして、立ち上がった。
「だから、嫌いになって……。それで、もう二度と優しくしないで、笑いかけたり……しちゃだめだからね」
最後にと、後ずさりしながら笑みを浮べた。
さよなら……。
これで何度目だろう、辛いのに笑って、好きなのに嫌いになってと嘘をついたのは。
大好きな人に、さよならと言ったのは……。
「椿、待て……」
「さよならっ」
そのまま、全速力で駆けていく。
廊下に座り込んだままの、一護だけを残して。
「椿っ!!」
背中ごしに、名前を呼ばれたような気がした。
もう二度と呼んでは貰えないと思っているからだろうか…。
白夜夢でも、幻聴でもなんでもいい……。
ただ、その声を、言葉を忘れずにいよう…。
そう、心に決めて、ただ走り続けたのだった。


